from 福元友則
ビジネス書の名著の1つに「イノベーションのジレンマ」があります。
読んだことのある先生もいらっしゃるかと思いますが、未読の方向けにどんな本なのかをかんたんに説明します。
イノベーションのジレンマとは、なぜ優秀な企業が新興企業に負けるのかをテーマにした本です。
一般的に新しい技術は商品を改良するためのものであり、持続的イノベーションと呼びます。
ほとんどの技術的進歩は持続的イノベーションのものであり、持続的イノベーションは基本的にすでにその市場で有利に立っている人に有利に働きます。
つまり、大企業であったり地域No.1事務所であったりに有利に働くということです。
例えば税理士業界であれば、持続的イノベーションは税務や会計の省力化などの既存の税理士事務所の経営にかかわる新しい技術や知識になります。
ですので、クラウド会計というのは大手のほうが有利に働きますしRPAも大手に有利に働く可能性のほうが高いです。
税法改正なども該当します。
既存の市場とか業界の枠組みの中での改正は基本的に大手に有利に働くということです。
しかし破壊的イノベーションと呼ばれる革新は違います。
従来の顧客に求められていたものとは全く異なる性能や特徴を持った技術などを破壊的イノベーションと呼びます。
破壊的イノベーションの特徴は、大手に有利とは言えず、むしろ大手に不利になりやすい。
基本的に先行者が有利になり、今までの市場とは比べ物にならないほど儲けやすいという特徴があります。
地域No.1事務所に勝つ戦略はここにあります。
持続的イノベーションで勝負せず、破壊的イノベーションで勝負するのです。
つまり既存の税理士事務所に枠組みを超えて、新しい枠組みで勝負をするべきなのです。
ではどのタイミングが持続的イノベーションから破壊的インベーションでの勝負に切り替えるタイミングなのでしょうか?
この本のなかでは、「購買階層」という商品進化モデルが紹介されています。
まず機能に対する市場の需要を満たす商品がない場合、商品の選択基準は機能になります。
例えば税理士業界の価値の中心が節税であれば、節税できる税理士かどうか、節税をどれぐらいできる税理士かどうかが税理士事務所を選ぶ基準になるということです。
次に機能に対する需要を十分に満たす事務所があちこちにあると、お客さんはその基準で事務所選びができなくなります。
ですので、お客さんは何で税理士事務所を選ぶようになるのかというと、信頼性になるというわけです。
この先生は信頼できるかどうか、この事務所は信頼できるかどうか、よそより信頼できるかどうか、が事務所選びの基準になってきます。
一番信頼性が高く感じられる先生や事務所にお客さんが集まるようになります。
ですので、大手がさらに大きくなりやすい状況なわけです。
次にお客さんの求める信頼性を満たせる先生や事務所がたくさんでてくると、お客さんは信頼性だけでは選べなくなってきます。
そこで重視されるのが、利便性。
相談しやすいとか、取引しやすいとか、他にもいろいろあるかもしれませんね。
クラウド会計とかHP活用もここに該当するかもしれませんね。
で利便性も満たす先生や事務所がいくつもでてくると、お客さんの選ぶ基準は最後の基準である価格に移行します。
価格競争が起きている業界は供給過多であり、商品に改良によって価格をあげることは困難になります。
つまり価格競争が起きたタイミングが持続的イノベーションではなく、破壊的イノベーションに移行するタイミングなのです。
既存の税理士事務所の枠組みを超え、新しい枠組みを作っていくのがこれからの税理士事務所の経営に必要であり、最大の課題になってきます。
まだ未着手の先生はぜひ時間をとって検討してみてください。
すでに着手済みの先生は先行者利益をとるためにもぜひ積極的に推し進めてください。