From:高名一成
「この見積もり、下げたら決まると思ったんです。」
先日、ある先生がそう言いました。
僕は聞きました。
「なんで値下げしたんですか?値下げを求められたんですか?」
先生は少し考えてから、こう答えました。
「そうじゃないけど…下げないと決まらないと思って。」
そこで、僕はもう一つ質問しました。
「本当は値下げしたくないということですか?」
「……そうですね。できれば下げたくないです。」
僕はこんなふうに聞き返しました。
「もし値下げしなくても決まる方法があったら、どうします?」
先生は少し驚いたように笑いながら、こう言いました。
「そんな方法、あるんですか?」
この悪癖を治しましょう!
営業をしていれば、「値下げしないと契約につながらない気がする」そんな不安を感じたこと、誰でもありますよね。
そして実際に、「もう少し安くなりませんか?」
とお客さんから言われた経験も、一度はあると思います。
そして、だいたいの場合、応じてしまう。
「ここで断ったら失注しそうだし…」
「せっかく見積もり出したのに、もったいないし…」
そうやって、気づけば「自分の利益を削って契約を取る癖」がついている会社は少なくありません。
でも、日本にはこの値下げ要求を受け付けないことで有名な会社があります。
それが、平均年収日本一のキーエンスです。
キーエンスは、センサーや測定機器を扱うメーカーですが、どんなに値下げ交渉されても、価格を下げません。
それでも契約は途切れない。
むしろ、顧客のほうから「ぜひ導入したい」と言ってくるそうです。
なぜそんなことができるのか?
それは、キーエンスがモノを売るのではなく「問題を解決する」提案をしているからです。
たとえば、「検査ミスを減らしたい」「生産効率を上げたい」などの悩みに対して、最初にやるのは製品の紹介ではなく、問題の分析。
お客さんがまだ気づいていない問題点まで一緒に整理して、「こうすれば成果が出る」という最適解を出しています。
その結果、価格よりも「成果」で選ばれる。
これが、キーエンスが高価格でも売れる理由なんです。
顧問先は何に困ってますか?
税理士やコンサルの世界でも、これはまったく同じです。
顧問料を下げれば契約が増える…そう思って値下げを続けた結果、
・忙しいのに利益が出ない
・お客様の質が下がる
・自分の時間が奪われる
こうして、しんどい経営が続いてしまいます。
本当に必要なのは、価格で選ばれることではなく「価値で理解されて選ばれる」こと。
だから、値下げをしようかどうか考える前に「お客さんが本当に困っていること」を一緒に整理してみてください。
お客さんは自分が困ってることを解決してくれたり、理想の未来に近づけるリソースに価値を感じます。
値下げしなくても契約が決まる人は、みんなこのプロセスを丁寧にやっています。
つまり、値下げしなくても選ばれる方法とは、相手の問題課題を言葉にしてあげる力のことなんです。
この力が身につくと、単価が上がる、顧客の質が上がる、仕事がラクになる、そんな状態が、自然と手に入ります。
-高名一成